厚生労働省の提出資料によると、2023年の小中高校生の自殺者数は513人でした。
高校生が347人と一番多く、次いで中学生が153人、小学生が13人となっています。
参考資料⇒ 令和6年8月8日 第7回こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議
中学生の動機は「いじめ」と「学友との不和(いじめ以外)」が多いと勝手に思い込んでいましたが、最も多かったのは「学業不振」、次が「進路に関する悩み」となっていて驚きました。
大人が誰も思いもしない理由で子どもは悩んでいて、自ら命を絶つことを選んでしまう子もいます。
実は私も無意識のうちに、受験生だった娘に対して大きなプレッシャーを与えていたことがあります。
この記事では、私が受験生だった娘に対して大きなプレッシャーを与えてしまった話、
そして、「学業不振」が原因で鬱になり不登校になってしまった娘の同級生の体験談などをまとめます。
「学業不振」と「進路に関する悩み」が意味するもの
2022年の警視庁のデータによりますと、小中高校生の自殺者数は514人で統計のある1980年以来、過去最多となりました。
そして、2023年の小中高校生の自殺者数は513人で高止まりの状態となっています。
厚生労働省「令和5年中における自殺の状況」図表1-14 小中高生の自殺の原因・動機より
上の表を見ると、中学生の自殺の原因で一番多いのは学校問題で、内訳を見ると学業不振が一番多いことが分かります。
この事実等を重く受け止めた「こども家庭庁」は、自殺に関する情報の集約・分析し、総合的な取り組みを進めています。
こども家庭庁の取り組みはこちらに書かれています。
⇒こどもの自殺対策の推進のために
以前、元名古屋市長である河村氏は「子どもを一人も死なせたくないから高校受験をやめよう」と言っていたことを思い出しました。
名古屋の河村市長も「1年間の中高生の自殺者はみな進学問題が原因」と話していました。東京の私立女子校で飛び降りがでると「いじめ?」と噂が立ちますが実際には成績不振や勉強の負担感ですよね。大学受験が緩くなっている事実と中高生が持つプレッシャーの差は大きいです。 https://t.co/xqwgAXnHQE
— 杉浦由美子 (@sugiyu170) October 26, 2024
河村氏は「受験のストレスがいじめや自殺に繋がる」とも言っていましたが、警視庁のデータを見る限りその通りだと言わざるを得ません。
学校の成績が下がっても、受験で失敗しても、大人である私たちは「それでも人生は何とかなる」ことを知っています。
でも中学生の中には、受験の失敗=人生終了と考えてしまう子もいます。
高校受験をやめることは現段階では無理なので、「成績が下がっても、受験で失敗しても人生は終了しない」と言うことを伝えていく必要があります。
受験生の娘に大きなプレッシャーを与えてしまった過去の話
「成績が下がっても、受験で失敗しても人生は終了しないことを伝えなければ…」なんて偉そうなことを書きましたが、実は私自身が受験生だった娘に大きなプレッシャーを与えてしまった過去があります。
私がプレッシャーを与えていたことに気づいたのは、娘の高校の合格発表の当日でした。
第一志望校の合格を確認したときの娘の第一声は「やったー!」でも「嬉しい!」でもなく「良かった、親孝行できた!」でした。
「下の子(息子)もいるから公立高校に合格してくれると助かるな」
「私立高校は学費が高いからねぇ」
冗談半分で言ってたこれらの言葉を、責任感の強い娘は親が思う以上に重く受け止めていたことが、そのとき初めて分かり深く反省しました。
親は悪気なく言ったつもりでも、子どもにとっては大きなプレッシャーになる言葉もあるので注意が必要です。
「学業不振」から不登校になってしまった娘の同級生
娘の同級生は「学業不振」になったことで鬱になりました。
鬱症状から、寝ても寝ても眠い「過眠」になり、授業中も起きていることができず、先生に何度叱られても寝てしまう状態となり…学年が上がるタイミングで自主退学しました。
退学した途端、過眠が治ったんだって。
高校を退学したあとは通信制の高校に入り、高卒認定試験も受けて大学に入りました。
同級生の父親は普段から些細な悩みを聞いてくれて、退学したいと打ち明けたときも一切否定せず、一緒に通信制高校の見学に行ってくれたそうです。
大学4年生になった同級生は、父親が理解を示して「逃げ場」を用意してくれたから今の自分があると言っていました。
自分の悩みを話せる大人が身近にいることは、こどもにとって大きな心の支えになります。
父親、母親、学校の先生、塾の先生、スクールカウンセラー等々、悩みごとを話せる相手は人それぞれ違います。
うちの息子は、塾講師のアルバイトの先生(大学生のお兄さん)に進路の相談をしていました。
息子の内申と模試の結果を見て、的確なアドバイスをしてくれました。
自分が決めた進路を最後まで応援してくれた塾講師の先生のことを、息子は今でも感謝しています。
最後に
原因や動機で二番目に多い「進路に関する悩み」ですが、親・親戚・兄弟からのプレッシャーも関係していると聞きました。
人間関係の悩みでもあるんですね。
中学生、特に受験生は、家と学校と塾を行き来するだけの狭い世界で生活しています。
家族、学校、友達、と自分の周囲だけが全ての世界になっているので、成績が落ちたことで親に叱責されたり、進路に否定されたりすると居場所がないと思い込み、生きていても仕方がないという極論に至ってしまうのかもしれません。
そんなことにならないためにも、大人がこどもの些細な話に耳を傾けて、必要に応じて「逃げ場」を用意してあげたいですね。
娘と息子が高校を卒業したから分かることですが、高校受験で失敗しても大学受験で成功した人は沢山います。
狭い世界にいることに気づかず、自ら命を絶つ選択肢を選ぶまでに追い詰められる子がひとりでも減ることを願います。