2023年6月に愛知県教育委員会は『部活動の地域移行・地域連携の進め方に関するガイドライン』を発表したのですが、課題があることから多くの市町村ではまだ移行されてない状態です。
そのような中、豊橋市が新たな取り組みとして、2025年9月より中学校部活動を土曜日、日曜日、祝日は実施しない方針を決定しました。
豊橋市は市大会が無くなるってこと?
市大会が無くなると県大会も出場できなくなるよね?
豊橋市の部活に対する「新たな取り組み」、そして他の市町村の「現時点での取り組み」はどうなっているのか、詳しく調べてみました。
豊橋市の土日祝の中学校部活の全面廃止について
豊橋市の部活に対する「新たな取り組み」で一番疑問だったのは、市大会等の開催の有無です。
娘と息子の言う通り、土日祝日に部活動が全面廃止になると「市大会」や「対抗戦」などの参加ができなくなります。
大会が全くないと部活として成り立たなくなるよ?
大会を含めた、休日の中学校部活動の今後についてはこのように書かれているよ。
- 大会等の参加については、土曜日や日曜日の活動を認める
- 大会等の参加を除き、土曜日の部活動は、年度に5回まで認める
このように条件付きで土日の活動も認められているので、各種大会の参加は可能です。
市大会の運営は誰がやるのか?
学校単位のチームを前提とした「公式戦」である市大会などの各種大会は教員が担当しているケースがとても多いです。
なので、豊橋市が本気で教員の負担を減らすことを考えるなら、市内大会は完全に廃止、県大会出場辞退地区にする必要があります。
大会の運営も含めて地域移行する必要があるってことだね。
豊橋市で実施される『のびるんde スクール』とは?
豊橋市では休日の中学校部活動が無くなる代わりに、中学生を対象にした「『ど』のびるんdeスクール」を新設する考えが明らかになっています。
中学生の「『ど』のびるんdeスクール」の構想案はこちらに書かれています。
既に豊橋市で実施されている、小学生向けの「のびるんdeスクール」の詳細はこちらです。
豊橋市の「『ど』のびるんdeスクール」の構想案を読むと、部活というより体育の授業に近い印象がありました。
部活の代替ではないんだね。
他の市町村の「部活の地域移行」に対する取り組み
名古屋市
名古屋市では、令和7年10月から大会参加等を除いた土曜日・日曜日の部活動は行わないことが決まっています。
令和7年10月以降の「名古屋市立学校部活動等活動日・活動時間の基準」はこちらです。
月曜日から金曜日の部活動は継続されますが、土曜日・日曜日は、部活動との連続性がない「地域クラブ活動」となります。
一宮市
一宮市はすごく教育熱心なイメージがあるのですが、部活の地域移行の取り組みもしっかり行われていました。
一宮市では、学校部活動に代わる地域クラブ活動の総称を「いちのみやスポーツ・文化クラブ」と呼んでいます。
令和8年度から、休日の学校部活動は「地域クラブ活動」へと移行し、指導者も教職員(顧問)から「地域クラブ指導者」へと変わっていきます。引用:学校教育課
こちらのサイトには「令和6年一宮部活地域移行いちのみやモデル事業」の取り組みについても詳しく載っています。
「令和6年一宮部活地域移行いちのみやモデル事業」のダンス教室のチラシはこちらです。
本格的なダンス教室が20回4,000円で習えることに驚いたよ!
個人的に休日美術部が気になりました。
春日井市
春日井市も、令和5年10月から休日の部活動は、春日井市教育委員会が運営する「地域クラブ活動」に移行しています。
春日井市の地域クラブ活動の情報はこちらです。
地域クラブの一覧表を見たところ、今までの中学校の部活には入っていなかった「女子サッカー」や「ダンス」がありました。
教育実習で分かった中学校の部活の練習頻度の少なさ
娘は中学校の教育実習中に、バレー部の顧問の先生に頼まれて部活指導のお手伝いをしました。
中学、高校とバレー部だったから頼まれたよ。
娘の中学時代のバレー部は、平日は毎日、土日は練習試合が入っているのが当たり前で、テスト週間中くらいしか部活の休みはありませんでした。
部員たちは練習の多さにうんざりして「休みが欲しい」が口癖になっていました。
ところが教育実習先の中学校のバレー部は、平日は2~3回、土日はどちらか半日だけと活動日数が少なく、一日の練習時間も娘の時代より短縮されていました。
娘が驚いたのは、生徒たちが部活がある日をとても楽しみにしていたことです。
バレー部の生徒たちから「○○先生(娘の名前)、今日は部活があるんだよ!来れる?」と嬉しそうに廊下で声をかけられ、部活をサボる生徒はおらず、短い時間の中でどの子も一生懸命に練習していました。
生き生きと練習している生徒たちの様子を見て、「強くなるために」とひたすら練習を詰め込まれるより、少し物足りないくらいの練習量であることが中学の部活では正解だ、と娘は言っていました。
練習時間が短いからこそ、みんな集中してがんばっていたからね!
愛知県の中学生の運動能力について
2023年度の新体力テストの愛知県の成績は以下の通りとなっています。
中学2年生の男子は46位、女子は45位
参考資料⇒ 2023 年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果について
2023年がたまたま低い順位だった訳ではなく、ここ7~8年、愛知県は最下位に近い順位を取り続けています。
「愛知県の子どもたちは全国平均と比べると体育の授業以外で1週間に運動する時間が少なく、学習以外で平日にゲームやスマートフォンを見ている時間がかなり多い」と記事で読みましたが、それらを考えると、平日の部活は必要に感じます。
愛知県が全国一の車社会で歩くことが少ないのも最下位になる原因じゃない?
ちょっと近所のコンビニに行くにも車に乗っちゃうからねぇ。
これは余談ですが、娘が教育実習でお世話になった中学校のバレー部の試合を見に行ったところ、全体的に試合のレベルは低くなっていたと言っていました。
練習量が娘の時代の半分になっているので、技術面等のレベルが下がるのは仕方がないのですが、こうして競技自体が衰退していくのかな?と心配になったそうです。
中学生は基礎力を身に付ければ十分だと思っていても、いざ試合を見ていたら部活の今後について考えちゃったよ。
部活は悪なのか?
娘が教育実習に行って話を聞いたことで、教員の仕事がどのように大変なのかが分かりました。
部活が残業時間の多くを占めていることは間違いないのですが、娘曰く「部活が完全に地域移行しても教員の定時退勤は難しい」とのことです。
部活以外でも教員の働き方の改善は絶対に必要です。
ところで、娘と息子が通っていた中学では「部活の指導に燃えている」先生が何人もいました。
教育実習生の中には、教員になったら部活を教えたいと言っている人もいました。
調査によれば、部活をやりたい教員と、やりたくない教員は半々程度とのことです。
2018年のこちらの記事によれば、部活をしたい人の方が少し多いです。
⇒弁護士ドットコムニュース 部活顧問「したくない」46%「したい」54%、若手ほど肯定的…教員3千人分析
「教員でなくても可能な業務」を外部スタッフに頼んで確実に定時で帰れる仕事量になり、やりたい教員だけが、部活を教える余裕があるくらいの業務量になればいいのにな…、と思います。
各学校の教員の人数をもっと増やして業務を分担できたらいいのにね。
最後に
娘は「各学校の教員の人数をもっと増やして業務を分担できたらいいのに」と言っていましたが、教員を増やすにしても、地域移行するにしても、外部コーチにお願いするにしても、結局「指導者の報酬(お金)」が必要となります。
もしレベルが高い指導者を雇うのなら、それなりの報酬が必要になるよね。
結局はお金かぁ…。
土日の部活に代わる活動を、市町村が面倒見なくてもいいのでは?という意見も見かけたのですが、こどもたちに経済的理由関係なく活動出来る場は作ってあげて欲しいです。
クラブチームになるとチーム費、ユニフォーム、チームウェア、遠征費、施設利用費など部活の何倍もの費用がかかりますからね。
日本の部活動は過渡期にさしかかっていますが、教員と中学生それぞれが納得できるやり方に落ち着いてくれることを願います。